「すみたあきのじんぞういっこください」 誰にも一度は経験があるはず セピア色に彩られた想い出のアルバム 無邪気に笑う子供達の中に自分が溶け込んで調子を合わせている 他の子と違って、その少年にだけ色がついていない そんな幼い自分を、遠くから眺めている 橋の袂、子供達は日が落ちるのを惜しみながら走り回っている 太陽が地平線に消えると、あの暗くて怖い夜が訪れる 足元に伸びる影は一段と大きさを増し、彼らはそこにいる事の出来る時間の制限を 体に感じる 帰らなくっちゃ  そう思ったとたん、ひどくお腹がすいている事に気づいた 子供達はお互いの顔を見合わせると、それぞれの方向へ足を向ける 少年はいつも取り残されていた  そして誰もいなくなった広場を見渡し、大きな橋を見上げるんだ 少年は、いつも向こう側に渡りたいと考えている 向こうの河川敷には、大きな赤い帽子をかぶった、 僕よりちょっとだけ大きな女の子がいる 太陽は赤く染まって、橋の向こうに隠れていてここからじゃ見えない しばらく眺めている ぼんやりと眺めている それを思い出の向こうで私が眺めている 少年はやっと、温もりを思い出して家に走る 家に帰る途中、古ぼけた駄菓子屋がある 少年はいつもそこに吸い込まれるように入ってゆく この駄菓子屋に入った途端、思い出は急に鮮明に色を覚える アルバムはその細部を再現し、視界の全てが認識できる …あの左の棚にあるのは、少し古い人形 …魔法の世界にいるような、色とりどりのお菓子 …何回も10円玉を3枚握りしめて、心を弾ませて、 でもあのクジには一度も当たらなかったっけ …いつも同じように柔らかい笑顔で、細い目で少年を見ているおばあちゃん 少年には欲しいものがいっぱいある でも、本当に欲しいものは見つからない 棚の下を探す 一生懸命背伸びして、店中を見渡している 赤い大きな帽子が目に入った 一瞬あの子がいたのかと思った 青い帽子、黄色い帽子、草色の帽子、…そして赤い帽子 少年は手にとって、そっとかぶってみた ぶかぶかだ ぎゅっと握りしめて、帽子をもとあった場所に戻す 少年はおばあちゃんを振り返る 何か言いたげな顔をしているが、口に出せずに、 そのまま背を向けて店を出ようとする 店を出る一歩のところで立ち止まって、振り返り様に少年は口を開いた 大きな声で 「すいませーん、じんぞういっこくださあい!」 全速力で逃げる少年 その後をバズーカ持って追いかけるおばあちゃん… 少年にはいつの間にか色がついている… このゲームはクイズゲームだったりするからお客さんには座蒲団用意してもらおうか ●