(18)幻影 ふたりがコクピットにもどると、そこにすわっているのは、ポエル! でも、顔もからだも、全体がぼやけて、かすんでいます。 かさぶたも包帯もなく、ほほえみさえうかべています。 ルナリィ 「ポエルが、帰ってる」 ジャンパー「そうじゃない。船内の医療センサーはなにもキャッチしてない。 物質的な手段によらない……。ESP?」 ルナリィ 「ポエル、あなた無事なの?」 ポエル 『おいらは……いや。まだ、わからないな。 からだが、まったくおもい通りにならない。 いや、それより。いいか、よく聞いてくれ。 あと……12時間くらいで、この火山が爆発する。 それまでに、なんとしてでも発進するんだ。ふたりだけで』 ジャンパー「きみをおいて帰れっていうのか」 ポエル 『ぼくのことは、考えないでいいんだ……。もう」 ジャンパー「それでもだめ。着陸船は、軌道にもどれない。脱出速度がでないん      だ。 火山が爆発するなら、惑星の裏側にでも避難するしかできない」 ポエル 『いけない。惑星規模の災害になる。 惑星の地表はもちろん、大気中や海中にいても、だめだ。 船の故障のことは、しってる。 でも、だいじょうぶ。おいらのいうとうりにすれば、脱出できる。 いまから……そう、12時間後に、あの山の上空5千メートルまで上昇 して、最大加速をかけるんだ。方向は、火口と惑星中心を結ぶ直線だ』 ジャンパー「それで?」 ポエル 『そうしたら、着陸船は、ある、大きなものに包まれるだろう。 でも、こわがらないで。それに身をあずけるんだ』 ルナリィ 「いったい、なにがおこるの?」 ポエル 『もし、だれもがへまをしなければ。きっと、すてきなことが、起こる はずさ』 ジャンパー「それじゃ、わからないよ」 ポエル 『悪いけど、くわしく説明してる時間がない。今のぼくには、しなけり ゃいけないことが、たくさんあるんだ』 ここまでだ。じゃあね。幸運を』 ……ポエルのすがたは、煙のように消えてしまいました。 ルナリィ 「あと12時間で、発進できるの?」 ジャンパー「ぎりぎりだと思う。すぐ、したくにかかろう。とにかく、損傷箇所の 応急修理からはじめよう。いまはポエルを信じるしかない……!」 ■