<<<<<<<<<<<<<<<光神降臨秘話 優士伝>>>>>>>>>>>>>>                                沙華 興輝 著   第0幕.プロローグ 遙か昔、地球上の人類がやっと二本足で歩き始めた頃、太平洋に浮かぶ広大な大 陸で壮絶な戦いが今、終わろうとしていた・・・。 「こいつを封印すれば俺たちの戦いも終わりだ。」 「だがこの印はわずか数千年の効力しかない・・・。いつか封印が解けたら今度こそ こいつを倒さなければならないぞ。」 「今の私達が封印するのがやっとだったこいつを数千年後には倒せって言うの?!」 「私達優士にはなぜか個体として進化する能力があるの。数千年もあればこいつを倒 せるくらいに強くなれるかもしれないわ。」 「そうだ、俺たちは強くならなくてはいけない。そのためには生き残らなくてはいけ ない。この大陸もそろそろ限界だ。早く封印して西の島に移るぞ。」 「皆、六芒星の陣を組んで!・・・ルーヴ、レニスゥェトゥラ、バレスケア、ザンダ 、ローベルニケア、ミスルゥェルダ、デゥータ、ヴェスタ・デ・デゥラァウル!」 七色の閃光が辺りを包む。六人が陣を組んだ中心にはクリスタル状のタワーが出 来上がった。時を待たずして大地が大きく揺れあちこちに地割れが走った!六人は呪 文を唱え、どこへともなく消え去った・・・。 やがて大陸はいくつかの島を残し沈み、その一帯は大洋となった。この沈んだ大 陸こそ神秘の陸地”ムー大陸”だったのである・・・! 第1幕.級優士 第1章.誕生編 第1話.冴姫 紅牙 ここは日本、G県K市。ありふれた登校風景がそこにはあった。 「いってきまーす!」 「あっ、紅牙!急がないと遅刻するよ!」 「沙弥香!そういうお前もだろ!」 「待っててあげたんでしょ!いくよ!」 *********************************** 「はい急ぐ、急ぐ!紅牙!近所のあたしの顔も立てておくれよ。」 「なんでお向かいの陽子ネーが、うちの高校の教師なんだ?!」 「今更言ってもしようがないだろ!校門に一歩でも入ったら教師と生徒の中だからね 。急げよ!」 「なんであーも口が悪いんだろ。」 「紅牙を弟のように思っているんじゃないの?」 「実の姉だったらもっとイヤだ。」 「聞こえてるぞー!」 「やべー、早く教室にはいろう。」 「あはははっ。」 *********************************** あっと言う間に放課後。 「冴姫くん!」 「あっ、陽子ネー・・・じゃない空野先生。」 「最近変わったことない?」 「変わったこと、と言うと?」 「なんというか・・・自分の使命みたいなものを感じるようになってきたとか。」 「?・・・なにそれ・・・。なあーんもないよ。陽子ネー頭大丈夫?」 「ここでは陽子ネーじゃないでしょ!・・・そう、なんにも変化ないの・・・。いや ね、明日紅牙の18歳の誕生日でしょ?そろそろ進路について考えているかな、と思 って。」 「将来は前からイラストレーターだって言っているだろ!」 「そ、そうだったわね。あ、じゃいいの。さようなら。」 「さようなら。なんなんだ?」 「紅牙!一緒に帰ろ。」 「沙弥香か、お前陽子ネーの授業あったよな、陽子ネーなんか変じゃなかったか?」 「別に変とは思わなかったけど・・・。紅牙のことで悩みがあるんじゃないの?」 「俺か?進路決めてあるし、なにもないと思うけど。」 「実は紅牙のこと好きだったりして!」 「冗談でも言うなよ!そんな感じではなかったし、・・・”使命”ってなんのことだ ろう?」 「いずれ分かるんじゃない?さっ、帰ろ!」 *********************************** 冴姫宅にて。 ゴォォォォ・・・・。 「・・・むにゃ・・・。何時だ?・・・午前0時。風の音がうるさくて眠れやしない 。そういや、台風が来るって言ってたな。家は大丈夫だろうな。」 『冴姫 紅牙!』 「えっ?!」 窓の外を見るとそこには仮面をかぶった女性らしい人影が宙に浮かんでいた! 『たった今お前は18になった。そろそろお前の魂に眠る優士としての力を覚醒させ る時が来た!本当にあの”アーキ・テクス”を倒せるほど強くなったのか、試させて もらうぞ。』 「”優士”?”アーキ・テクス”?」 『我が名は”メル・セイユ”。いざ、勝負!』 「なにっ!」 ガシャァン!激しい音とともに部屋のガラスが飛び散る。だが、辺りはシーンとなっ ている。あれ程の音、気付かないはずがない!まるでここ一帯が別の次元になったか 、或いは時間が止まったかのような感覚だった。 『はぁっ!』 「うわぁあっ!」 メルの正拳をくらった紅牙は二階にある部屋から投げ出された。 ドンッ!紅牙の体は地面に叩きつけられた。背中から落ちたが、大した怪我はなさそ うだ。紅牙は「なぜなんともないんだ?」と疑問を持ちながらでも、次のメルの攻撃 に備えていた。 『いぇえいっ!』 「だぁぁっ!」 二階から飛び立ち短刀をかまえるメルと、近くに落ちていた小枝を拾ってそれに応戦 しようとする紅牙とが交わるのは同時だった。 ガキィィィンン!紅牙にも目の前の現象は不思議だった。半分枯れている小枝が、か なりの硬度であろう短刀を欠けさせたのである! 『・・・ふっ。』 メルは軽く笑うと短刀を捨て、右の掌を紅牙に向けた! 『サーザ!』 「うわぁぁあっ!」 掌から電撃が走り、紅牙は瞬く間に後ろに吹き飛んだ。 『これが電空の初歩魔力!この程度でダウンするようじゃまだまだね!』 シュンンッ 『?!』 「ストーム!」 『きゃぁああっ!』 倒れたと思った紅牙が隙を突いてメルに魔力を食らわせた!火炎の二級魔力”ストー ム”を! 「うおぉぉっ!」 さっき短刀を欠けさせた小枝を信じ、メルに斬りかかった!メルの防御は間に合わな かった。 キュイィィン!高い音が響きわたった!メルの仮面が断ち割られたのだ! 「なにぃっ?!」 仮面の下の素顔が紅牙を驚かせた。なぜなら目の前にいる、自分に剣を向けた敵とも いえる人物が紅牙にとって最も身近で、且つ最も尊敬していた相手だったからである ! 第1話.終わり