ファレイヌ2 第39話「メダリオンイーグル」前編 登場人物 椎野美佳 声優。黄金銃ファレイヌの所有者。 魔法のヘアバンドでキティセイバーに変身。 エリナ 美佳のマネージャー。 三野愛子 美佳の後輩 アンジェラ クロムのファレイヌの所有者 早見祐二 麻薬捜査課刑事 ペトラルカ 新聞記者。メダリオンイーグルに洗脳されている マイク・リッガー ペトラルカの婚約者。 メダリオンイーグル あらゆるものに変形、合体可能な人間型兵器 プロローグ 白昼、東京・池袋の上空に突然、一機の青い戦闘機が現れた。 街を歩く人々でこの青い戦闘機の存在に気づいた者はほとんどい なかった。 その戦闘機は高速な上に、通常の戦闘機の4分の一の大きさでし かなく、しかも無音。自衛隊Y基地でも最初にこの戦闘機の機影を レーダーで捉えたのは午後12時27分であった。 Y基地の管制塔ではすぐにこの国籍不明機に対し、無線連絡を行 った。しかし、応答はいっさいなし。 事態を重くみた航空自衛隊は航空幕僚長を通じ、防衛庁長官に連 絡。長官は直ちに内閣総理大臣に自衛隊機出動の許可をもらい、午 後12時58分、二機の自衛隊機がY基地を飛び立った。 それから、23分後の1時21分、自衛隊機は青い戦闘機を発見 した。 「国籍不明の戦闘機発見。全長3メートル。これまでに見たことの ないタイプです」 パイロットは無線で基地に伝えた。 『通信を行え』 「了解」 パイロットは無線の周波数を変えながら、何度も青い戦闘機との 交信を試みた。 「そこの戦闘機、国籍と所属を明示せよ。繰り返す、そこの戦闘機 、国籍と所属を明示せよ。返答なくば、撃墜する」 しかし、パイロットの交信は全く無駄だった。 パイロットは再び基地に連絡を取った。 「相手の応答なし。どうしますか」 『街への被害を最大限考慮し、撃墜せよ』 「了解」 自衛隊機は青い戦闘機への攻撃態勢に入った。 パイロットはHUDウエポンモード(照準設定)をショートレン ジミサイルに設定した。 HUDスクリーンにターゲットがロックされた。 標的を捕捉した四角いマークの上にミサイル発射可能を示すダイ ヤモンドマークが点滅する。 「発射」 パイロットは発射ボタンを押した。 自衛隊機から赤外線誘導ミサイルが発射された。 誘導ミサイルは前方の青い戦闘機に向かって飛んでゆく。 その数秒後、ミサイルは青い戦闘機に命中し、爆発した。 「戦闘機、撃墜。任務完了!」 爆発で異様な形に変形した戦闘機が墜落してゆく。 「何だ、あれは」 パイロットは呟いた。 通常の戦闘機なら、ミサイルが命中すれば、バラバラに砕け散る はずのものが、その戦闘機はバラバラにならず粘土を潰したような 形で墜落してゆくのである。 「このままじゃ、下が危険だ」 パイロットはその戦闘機を追跡した。 再びターゲットの捕捉にかかる。 「ん!」 パイロットは落下する戦闘機を見て、目を見張った。 青い戦闘機が突然、変形し、元の戦闘機の形に戻ってしまったの である。 「バカな」 パイロットはすぐに基地へ連絡しようとした。 しかし、その時、青い戦闘機がインメルマンターン(反転)を行 って、自衛隊機へ突っ込んできた。 自衛隊機は戦闘機をかわそうと、機首を上げる。 間一髪、自衛隊機は戦闘機と衝突を免れた。 しかし、戦闘機は驚くべき旋回能力で自衛隊機の後ろを取った。 「僚機、援護を頼む」 『了解』 もう一機の自衛隊機が戦闘機の背後に回った。 そして、機銃掃射を行う。 だが、戦闘機は弾丸を全て跳ね返してしまった。 「何て奴だ」 パイロットは唖然とした。 戦闘機は前の自衛隊機との距離を小型とは思えないスピードでぐ んぐん縮めていく。 「あれだけくっつかれたたら、ミサイルが使えん」 パイロットは呟いた。 戦闘機は自衛隊機の真後ろに来ていた。 自衛隊機は何とか戦闘機を振り切ろうと上昇、下降、反転、旋回 と試みるが、戦闘機は執拗についてきた。 ついに戦闘機は自衛隊機の真下に入った。 『レーダーから奴が消えた。奴はどこだ』 「すぐ真下だ。むっ、何だ」 その時、自衛隊機の真下にいた戦闘機が自衛隊機に張り付いた。 「これは!」 パイロットは声を上げた。 戦闘機が液体のようになって自衛隊機を包み込んだ。そして、次 の瞬間、自衛隊機は青い戦闘機へと変化を遂げた。 それを見ていたパイロットはすぐに前を飛ぶ戦闘機のパイロット に連絡を取った。 「おい、大丈夫か!」 『ガー、ガー、ガー』 無線は全くつながらなかった。 「こちら、2号機より本部へ。1号機が戦闘機に乗っ取られました 」 『乗っ取られたとはどういうことだ』 「合体です。1号機と謎の戦闘機が合体したんです」 『もっと詳しく説明しろ』 「ですから−−」 パイロットがそう言った時、戦闘機から発射された赤外線誘導ミ サイルが目の前に迫っていた。 「うわああぁ」 自衛隊機は爆発した。 これが青い戦闘機、メダリオンイーグルの最初の事件であった。 1 報道 それから、わずか5分後、自衛隊機と合体したメダリオンイーグ ルは池袋にミサイル攻撃と機銃掃射を開始した。 突然の攻撃に東京は大パニックとなった。 メダリオンイーグルの攻撃は確実に逃げまどう人々に対して爆弾 を落としていた。 美佳がこの事態を知ったのは、ホテルの部屋でマイク・リッガー を相手にペトラルカの行方について話をしている時だった。 「美佳さん、メダリオンイーグルが現れました」 エリナが血相を変えて、部屋に飛び込んできた。 「とうとう現れたわね」 美佳はテレビを付けた。 テレビでは池袋が映っていた。ビルや車は破壊され、あちこちか ら煙が上がり、道路には人々の死体が無数に転がっている。 「もうこんなに」 美佳は愕然とした。「メダリオンイーグルは武器を持ってないは ずよ」 「戦闘機と合体しているようです。それでミサイル爆撃を」 「畜生」 美佳は椅子から立ち上がった。「マイクさん、ここも危ないわ。 早く逃げた方がいいわよ」 美佳はジャンパーを着た。 「君はどうするんだ」 「奴を倒すわ」 「だったら、私も行こう。あれを操っているのはペトラルカなんだ ろう」 「自分の婚約者が死ぬことになるかもしれないわよ」 「それでも構わない」 「じゃあ、ついてきたら」 美佳はエリナ、マイクと共に部屋を出た。 ホテルのロビーに降りてくると、ソフィーと愛子が待っていた。 「行くのか?」 ソフィーが美佳に聞いた。 「ええ」 「勝算はあるの?」 「ないわ。でも、奴を止めなきゃ、東京は破壊されるわ」 「待ちなよ」 ソフィーが美佳の腕を掴んだ。「今、あんたが出てって、イーグ ルに負けたら、それこそ世界がおしまいだわ」 「私はこれ以上の犠牲を黙って見てられないわ」 「気持ちは分かるけど、今は警察と自衛隊に任せるべきよ」 「先輩、あたしもソフィーに賛成だよ。ペトラルカが言ってたじゃ ない。先輩は最後の砦だって」 「うるさいわね、ほっといてよ」 美佳は強引にホテルを出ようとする。 しかし、今度はエリナが両手を広げて、美佳を止めた。 「エリナ」 「美佳さんを行かせるわけにはいきません」 「どいて。こうしてる間にも何人もの人が助けを求めてるの。もし 今、私がその人たちを見殺しにしたら、私が今までやってきたこと はみんな無意味になるわ、そうでしょ」 「美佳さん」 エリナの目に涙があふれた。 「エリナ」 美佳はぎゅっとエリナを一度抱きしめた。「今までだって戻って きたでしょ。私を信じて」 美佳はホテルを出た。 エリナは呆然と立ちつくしていた。 「あのバカ、こうなったら、私も行くわ」 ソフィーもホテルを出た。 「ああん、待ってぇ」 愛子もソフィーを追いかけて、ホテルを出る。 「エリナさん」 マイクがエリナに声をかけた。 「マイクさん……」 「一緒に行きますか」 「はい」 エリナは強く返事をした。 2 交戦 一方、メダリオンイーグルは武器弾薬のつきた自衛隊機から分離 し、今度は地上に降り立って、破壊活動を繰り広げていた。 警察は数千人に警官と機動隊員を動員し、装甲車とパトカーで街 の各道路にバリケードを敷き、また自衛隊は戦闘ヘリを出撃させ、 イーグルを迎え撃つこととなった。 「現在の被害状況はどうなってるの」 第15防衛地点に駆けつけた警視庁捜査一課警部、牧田奈緒美は 陣頭指揮に当たっている刑事に尋ねた。 「わかっているだけで死者380人、負傷者7800人です。しか し、新宿中心部にはそれ以上の犠牲者がいます。現在、犯人は新宿 方面へ進行。警官隊と交戦中です」 その時、無線が入った。 『第6防衛地点、現在交戦中。応援、頼む。ぐあっ……』 無線の主の声が途絶えた。しかし、無線からは銃声や悲鳴のよう な雑音が聞こえてくる。 「犯人は何者なの?」 「全く不明です。現在はっきりしているのは合体変形能力のある機 械人間と言うことだけです」 「機械人間……それで人数は?」 「一人です」 「一人?」 「たった一人にこんなに手こずってるの」 「よお、警部さん」 その時、D警察署の刑事、早見が奈緒美に声をかけた。 「早見刑事」 「こんなところでぶつくさ文句言ってないで、現場へ行ってみたら どうだ」 「え?」 「話じゃ、奴は銃弾が全く効かないらしいぜ。おまけにパンチ一発 で人間を殺す力を持ってる」 「いつものあなたにしちゃ、弱気ね」 「残念だが、あいつを倒せるのは日本でただ一人しかいない」 「ただ一人?誰よ」 「椎野美佳さ」 「早見刑事……」 「現場に行くか?途中までなら連れてってやるよ」 「お願いするわ」 「警部、危険です」 刑事が止めた。 「私は現在の状況を把握するために警視総監の命を受けてきたの。 報告だけで帰るわけに行かないわ」 「それでは護衛します」 「ご勝手に」 早見の乗った車に奈緒美が乗り込んだ。 奈緒美はバッグから拳銃を取り出す。 「そいつはしまっときな」 「何言ってんの?」 奈緒美が早見を見る。 「さっき、言っただろう。奴には銃弾は効かないんだ」 「見てもいないのに、随分知ったふうなこと言うのね」 「美佳から話はよく聞いてるんだ」 早見は車を発進させた。 護衛の車が早見の車の後に続く。 「美佳が絡んでるの?」 「絡むという言い方はやめてほしいな。彼女は巻き込まれたんだ」 「アパートの爆発事件以来、美佳たち、あなたの家に住んでるよう だけど、あなたってそんなに美佳と親しかった?」 「さあね」 5分ほど走ると、遠くで銃声が聞こえてきた。 「どうやら、近いぜ」 早見は車を止めた。 「どうしたの?」 「これ以上は危険だ。後は双眼鏡で見るんだな」 早見は双眼鏡を手渡した。 奈緒美は浮かない顔をしながらも、双眼鏡で遠くを見る。 「な、なに、あれ……」 奈緒美は呟いた。 「見えたか」 「見て」 奈緒美が早見に双眼鏡を渡した。 早見も双眼鏡を見る。 「驚いたね、こいつは」 双眼鏡から見えた光景は、青い装甲車であった。 しかも、その装甲車には前面部に赤い目、両側には腕がついてい た。その装甲車が警官を次々と殴ったり、はね飛ばしたりしている 。 「あれが犯人?」 「ああ。メダリオンイーグルって名前らしいぜ」 「メダリオンイーグル?」 「あらゆるものに変形、合体可能な人間型ロボット。第二次大戦中 にドイツのザイス・ゲッペナーという男が設計したらしい」 「あなた、もしかして奴が現れるの、わかっていたのね」 「美佳から聞いてはいたさ」 「どうしてそのことを警察に報告しなかったの?」 「現物を見ないで、頭の固い幹部連中が俺の話を信じると思うか。 ましてや、俺は幹部の嫌われ者だぜ」 「……それにしたって」 「それより、引き返すぜ」 「奴の近くへ行って」 「断る」 「上司の命令よ」 「だったら、あんた、一人で行ってくれ。俺はあんたと一緒に無駄 死にするのはごめんだ」 「意気地なしね。一人で行くわよ。さっさと車を降りなさい」 「ああ、言われなくてもそうするよ」 早見は車を降りた。 「ふん」 奈緒美は運転席へ移動し、車を発進させた。 後ろについていた護衛の車が早見の前で止まる。 「おい、警部をなぜ止めなかった?」 「上官命令でね、断れなかったんですよ」 3 放送 慶明学園高校。 5時間目の授業の途中で、構内に緊急放送が流れた。 <午後1時44分頃、国籍不明の戦闘機が池袋の繁華街を爆撃した という報道がなされました。池袋では多数の死者が出ていますが、 情報が錯綜しているため、現在の状況がわかりません。我が校では 本日の授業は終了し、学生のみなさんは担任の指示に従って、避難 の準備を始めて下さい。繰り返します……> この放送に教室内はざわめいた。 「みんな、静かに」 担任の教師が生徒たちを静める。 「まさか、メダリオンホークが」 西島健夫が立ち上がった。 「西島、座れ」 「先生、俺、早退します」 健夫が鞄も持たず教室を飛び出した。 「健夫!」 晴香も慌てて席を立つと、健夫を追いかけて教室を出た。 「ねえ、健夫、どこへ行くの?」 下駄箱のところで晴香は健夫を呼び止めた。 「池袋へ行く」 「池袋って、今、放送があったばかりじゃない。危ないわ」 「今、池袋を攻撃してるのはきっとメダリオンホークだよ」 「そんな−−。メダリオンホークを操ってる人は死んだって椎野さ んが言ってたじゃない」 「椎野さんはきっと池袋に行ってるよ。俺にはわかるんだ」 「待ちなさいよ」 晴香が止めるのも聞かず健夫は学校を飛び出していった。 「もう、あいつは」 晴香は一瞬迷ったが、健夫の後を追った。 4 変身 「どうやら、ここでストップね」 美佳たちを乗せた車は高田馬場近くの通りで足止めされた。 そこから数十メートル先にはもう警察車両によるバリケードが張 られていた。 「どうするの、美佳。ここから先、一般人は通れないわよ」 ソフィーが言った。 「ヘリを使いましょう」 マイクが言った。 「ヘリ?」 「この近くに私の会社の支部があります。確かそこの屋上にはヘリ が一台あったと思います」 「それはいいわ」 「しかし、パイロットがつかまるかどうか」 「運転は私がするわ」 ソフィーが言った。 「それじゃあ、すぐそこへ行きましょう」 美佳たちは全員車を降りた。 「椎野さーん!」 その時、一台のバイクが美佳の方へ走ってきた。 バイクには健夫、そして彼の後ろに晴香が乗っていた。 「健夫君、こんなところへ来ちゃ危ないじゃない」 「やっぱりいたんですね」 「え?」 「今、街を襲撃してる犯人はメダリオンホークなんでしょう」 「……」 「俺にも戦うのを手伝わせて下さい」 「駄目よ」 「なぜ?」 「あなたを死なせたくないから」 「そんなのおかしいよ。女の椎野さんが戦って、男の俺が逃げるな んてこと俺には絶対出来ない」 「健夫君、わかって。奴は人間じゃないの。殺人マシンなのよ」 「嫌だ、俺は椎野さんを守ると誓ったんだ」 「わがまま、言わないで!!」 美佳は強い口調で言った。 「椎野さんは俺のこと、嫌いなのか。昨日、言ってくれた言葉は嘘 だったのか」 「私は……」 美佳は辛そうに一度ぎゅっと目をつむった。「今の私は、あなた の恋人の椎野美佳じゃないわ」 「何言ってるんだよ」 「わたしは……」 美佳は変身ヘアバンドをジャンパーのポケットから取り出し、ぎ ゅっと握りしめた。 「わたしは人間じゃないの!」 美佳はヘアバンドを頭に装着した。美佳の体が光に包まれた。 「あっ!!!」 健夫も晴香も目を見張った。 美佳はエメラルドグリーンの長い髪と瞳を持ち、白いボディアー マーを身にまとった少女キティ・セイバーに変身した。 「これが私の正体よ」 「美佳、急げ」 ソフィーが叫んだ。 「さよなら」 キティはソフィーたちに続いて、走り出した。 「そんな……」 「健夫」 晴香が健夫の顔をのぞき込む。 「……」 「椎野さん、無事に戻ってくるといいね」 晴香は祈るような気持ちで言った。 5 大激戦 「何なの、あれは」 牧田奈緒美は車から降りた。 道路には警官の死体が無数に転がっていた。 バリケードのために設けられた車両がことごとく横転、あるいは 破壊されている。 青い殺人装甲車はまるでわけの分からない行動をしていた。 特に前進するために進路を妨害する警官を殺しているのではなく 、警官を殺すためにその方向へ動いている感じである。 「ぎゃあ」 ついに最後の警官が装甲車の腕に握りつぶされ、第6防衛地点の 機動隊・警官隊が全滅した。 「この化け物!」 奈緒美は拳銃を構えた。 「警部、これ以上は危険です。引き返しましょう」 護衛の刑事二人が奈緒美を止めた。 殺人装甲車が奈緒美たちの存在に気づき、向かってきた。今度は スピードを異常に上げている。 「警部、逃げて下さい」 刑事たちが奈緒美を押した。 その瞬間、装甲車が刑事たちに突っ込んだ。 二人の刑事ははね飛ばされ、地面に叩きつけられる。 「ううっ」 呻く刑事たちに装甲車はとどめを刺すようにひいていった。 「化け物!」 奈緒美は装甲車に向かって発砲した。 だが、装甲車はびくともしない。 今度は装甲車の目が奈緒美に向いた。 奈緒美は後ずさる。 「フオオオォォォォ!!!」 装甲車が妙な雄叫びを発して、奈緒美に襲いかかった。 体をすくめる奈緒美。 その時だった。 空から一人の少女が降りてきた。キティ・セイバーである。 キティは着地と同時に奈緒美の腰を掴むと、ジャンプして、装甲 車の攻撃をかわした。 そして、装甲車から離れたところで着地する。 「あなたは……」 奈緒美はキティを見て、呟いた。 「無茶もほどほどにね、ナオちゃん」 キティはウインクした。「さあ、離れてて」 キティは装甲車と対峙した。 「ここから先は一歩だって、進ませないわよ」 「フオオオオォォォ!!」 装甲車がキティに向かって、イノシシのように突っ込んできた。 「サイコランサー!」 キティの叫びと共に彼女の手に光の槍が現れた。 「くらえっ!」 キティは光の槍を投げた。 バシュッ!! 光の槍は装甲車を真っ二つに引き裂いた。 その瞬間、青い何かが装甲車から抜け出た。 「むっ!」 キティは上を見た。飛び上がった人間型のメダリオンイーグルが 襲いかかってくる。 「サイコブレード!」 キティの手に光の剣が発生した。 キティはジャンプする。 「やあっ!」 キティはイーグルの体を切り裂いた。 「!!」 しかし、切り裂いた体がすぐにくっつき、イーグルはキティの両 肩を掴んだ。そして、そのまま勢いをつけて、地面に落下する。 「うぐっ」 キティは背中を打ちつけ、呻いた。 さらに地面にキティを押さえつけたイーグルは口からドリルを出 した。 高速回転するドリルがキティの顔に迫る。 「くぅっ、パワーがあるのはあんただけじゃないのよ」 キティはイーグルの両手首を掴むと、彼の手を引き離し、そのま ま後ろへ放り投げた。 だが、イーグルは簡単に体制を立て直し、足から着地する。キティもすぐに起きあがった。 「美佳もやるな」 上空からヘリコプターを操縦して下の様子を見ていたソフィーが 言った。ヘリコプターにはソフィーとマイクだけが乗っていた。 「あのロボットの中にペトラルカがいるんでしょうか」 「いたら、とっくに切り裂かれてるわ。どこかこの近くで操作して るのよ」 「と言うことは彼女を捜し出せば、あのロボットは止められるんで すね?」 「捜しだして、殺せばね」 『そこのヘリコプター、ただちにこの場から離れなさい』 その時、二機の自衛隊の戦闘ヘリコプターが救援にやってきた。 「来るだけ無駄だと思うけど」 ペトラルカは手で了解の合図を行い、その場から離れた。 「おい、女の子がロボットと戦っているぞ」 戦闘ヘリのパイロットが下を見て、驚いた。 「アニメでも見てるんじゃないだろうな」 後ろの席の隊員が言った。 「どうする?」 「女の子を救助するんだ」 二機の戦闘ヘリはキティとイーグルの上空でホバリングしていた 。 「全くよけいな時に」 キティは戦闘ヘリを見上げて呟いた。 『そこの女性、早くその場から離れなさい』 ヘリのスピーカーから声が流れた。 「やかましいわね」 その時、イーグルが再びキティに飛びかかった。 両者の間で激しい格闘戦となる。 イーグルの強烈なパンチとキックの連続攻撃に対し、キティはそ れを全て見切ってよけた。 「信じられない、あの子、戦ってるぞ」 ヘリのパイロットは唖然とした。 「どうするんだ。これじゃあ、攻撃できないぞ」 「もうしばらく様子を見よう」 パイロットは言った。 「そんな攻撃、何度やっても当たらないわよ」 キティはイーグルをぶん殴った。 イーグルは一撃で吹っ飛んでいく。 「フオオオォォォォ!!!」 しかし、イーグルは雄叫びを上げて、再びキティへ突っ込んでい く。イーグルの攻撃は全く衰えることを知らなかった。 −−ちっ、これじゃ、らちが明かないわ。 キティはイーグルとの間合いを取った。 「サイコフォース!」 キティの手に球状の精神エネルギー体が発生した。 「とおっ」 キティはジャンプした。イーグルもジャンプする。 「これで消えちゃいなさい!」 キティはエネルギー体をイーグルに投げた。 バシュッ!!! イーグルは飛んできたエネルギー体をまともに受けた。 「フオオオオォォォ!!!」 イーグルは雄叫びを上げた。 「う、うそぉ!」 キティは目を丸くした。 何とイーグルはエネルギー体を両手で押しつぶして、消してしま ったのである。 「この野郎!」 キティはイーグルに飛びかかり、跳び蹴りを見舞った。 「あっ!」 しかし、そのキックがイーグルの胸に当たると、そのまま体内ま でめり込んだ。 「ぬ、抜けない」 キティの足はイーグルの胸に埋まってしまっていた。 イーグルはキティの足首を両手でがっちりと掴んだ。 「しまった」 イーグルはそのまま、自分の体を高速回転させた。 「きゃあ、目が回るぅー」 キティはわめいた。 イーグルは勢いのついたところでキティの足から手を離した。 キティはミサイル並の速さでビルの壁に飛んでいき、激突した。 キティの体はビルの壁に完全にめり込んだ。 「今だ、彼女が離れたぞ。撃てっ!」 チャンスとばかり上空の二機の攻撃ヘリがイーグルに向かって、 ミサイルを発射した。 ミサイルはイーグルに命中し、大爆発を起こした。 「やったぞ」 隊員が声を上げた。 地面に倒れたイーグルの体はグニャグニャに変形していた。 「本部に報告だ」 「おい、待て。まだ動いてるぞ」 「何っ」 イーグルの体は一度液体となって地面に広がると、再び集結し、 元のイーグルの体に戻ってしまった。 「化け物か、あいつは。攻撃を加えろ」 攻撃ヘリは再びイーグルに向けてミサイルを発射した。 しかし、今度のイーグルは飛んできたミサイルを受け止め、攻撃 ヘリに向かって、投げつけた。 「うわあああ、ミサイルが飛んでくる!」 攻撃ヘリはよける間もなく、ミサイルが命中し爆発した。 「退却だ」 もう一機の攻撃ヘリが逃げようとする。 「フオオオオォォォ!」 イーグルは戦闘機に変形し、空を飛んだ。 そして、攻撃ヘリのフロントガラスに張り付く。 「どうするつもりだ」 乗員たちの顔が恐怖にひきつった。 「フオオオオォォォ!」 イーグルの体が液体になった。そして、攻撃ヘリを覆っていく。 「計器類がおかしいぞ。操縦が全くきかなくなった」 パイロットが慌てた。 「本部、本部、応答願います」 隊員が無線連絡を取った。「駄目だ、通じない」 ピシッ! スライド式のドアのガラスにひびが入った。 乗員たちがガラスの方を見る。 その瞬間、ガラスが割れ、青い液体が流れ込んだ。 「うわあああぁぁ」 乗員たちは悲鳴を上げた。 「いたた」 一方、壁に激突したキティはようやく意識を取り戻した。 「ジャイアントスイングを食らったのは、小学2年生の時以来だわ 」 キティは壁から脱出した。 「ん?」 キティは空を見上げた。「あれは」 上空には前面に二つの赤い目、両側に腕のついた青いヘリコプタ ーが飛んでいた。 「ちっ、合体したのか」 キティは舌打ちした。 その時、ヘリと合体したイーグルからミサイルが発射された。 「サイコソーサー!!」 キティは右手に光の円盤を発生させ、投げた。 ドゴオォォォン!! 間一髪、ミサイルを迎撃する。 しかし、ミサイルの爆風でキティは吹き飛ばされ、地面に叩きつ けられた。 「もう、ぎっくり腰になっちゃうじゃなーい」 キティは文句を言った。 だが、そんなことを言ってる間にもイーグルが間近に迫っていた 。 ダダダダダダダッ!!! イーグルは機関砲を発射した。 「テレポート!」 キティはテレポートで、その場から離れる。 「くそぉ、このままじゃ体力切れだわ」 キティは額の汗を拭きながら、呟いた。 続く