┌┬────────────────────────────┬┐ ├┴────────────────────────────┴┤ │トラブルコントラクターズストーリー ミ☆          │ │       ミ☆   悪夢 めざめる(1) 茶川龍之介 著  │ ├┬────────────────────────────┬┤ └┴────────────────────────────┴┘  時代は西暦2995年、今から丁度1000年後の世界である。  全天に広がるマルチビュアーディスプレイに映し出される宇宙には、 退屈な静けさだけが広がっていた。 「はぁ、平和だねぇ……」  アンティークな白いティーカップに満たされたダージリン・ティーを すすりながらライアスは溜め息まじりにつぶやいた。  『ライアス・ガルディアン』この物語の主人公である。職業は厄介事 下請け人、いわゆる『なんでも屋』だ。  宇宙間標準時刻で言うなら午後6時。夕暮れのティータイムと言った ところであろうか。  およそ何処とも見当もつかない宙域で漂っている中型高速攻撃艇『シ ャインストライク』のリビングに居るのはライアスただ一人であった。 ──ライアスが夕暮れのティータイムを過ごしているのとほぼ同時刻。 「‥‥ん、なんだあれは…流星群か?」  地球から約10万光年の位置を航海する1500M級の大型旅客船『ユー トピア』のグルガン船長が相転移航法(フェイズドライヴ)を開始しよう とスロットルに手を掛けた時にモニターに映った謎の流星群。 「な、近づいてくる?」  船長がスイッチを入れるとモニターにレーダーが表示される。しかし モニターには『LOST(捕捉不能)』の文字しか表れない。 「馬鹿な、なんて速度だ!?うわぁぁぁぁぁぁ‥‥‥」  突然、謎の流星群が『ユートピア』に向かって信じられない速度で近 づいてくる。  次の瞬間、宇宙警察(ユニバーサルガーディアン)の宇宙航路管理局( スペースルートマネジャー)のレーダーから1500M級大型旅客船『ユー トピア』が消えた。 「ライアス、またSS−072地点で大型旅客船が消失しました。」  声の方を振り向くと、そこにはフリルの沢山付いたワンピースを着た 少女が立っていた。  見た目は十六、七と言ったところか。長くつややかなクリーム色の髪 と、愛らしい顔だちが印象的である。 ──その少女こそが、この中型高速攻撃艇『シャインストライク』のメ インコンピュータシステムと言うか分かりやすく言えばこの船“自身” だ。名を『マリア・クロシェッド』と言う。  通常は、質量を持った立体映像(リアル・ホログラフィー)になって生 活している。その都度姿を変える事が出来るが人型が一番気に入ってい るらしい。 「大型旅客船?またか‥‥気になるな‥‥」 「はい、その事件に関する依頼も星間通信(ユニバーサルネット)に多数 有りました。」  マリアはそう言うと、ライアスの座っている前のディスプレイに数件 の依頼を表示した。 「なるほど‥‥どれもその事件の犯人を捕まえろって依頼ばかりだな。 どれかいい物有るか?」 「そうですね、C−006なんていかがです?」  マリアは一つの依頼を点滅させた。 「C−006依頼元『バジール社』?でもこれ依頼料安いぞ。」 「でも、仕事の際の燃料、経費、武器etc...全て負担してくれるそうで すけど。」  ライアスはもう一度依頼内容を読み返す。確かにマリアの言う通り書 いてある。 「あ、本当だ。」 マリアは『ふぅ』と溜め息をついて(この辺が変に凝っている) 「依頼料以外見ていなかったでしょ‥‥」 と一言。  ライアスは聞こえない振りをして冷えてしまったダージリン・ティー をがぶ飲みした。 「依頼元に会いに行こ‥‥」  ライアスはパイロット・シートに着くと冷たい視線を送っているマリ アに言った。 「‥‥分かりました。SS−035地点惑星『ダイン』まで5万光年。 相転移航法(フェイズドライヴ)システム起動準備します。」  中型高速攻撃艇『シャインストライク』自慢のZヴィジョン潮汐力ブ ースター3基に斥力場ターボ2基が更に加速をかけ、一瞬にして亜光速 に達する。その際に起きる衝撃は超高性能慣性中和システムにより中和 される。いずれもこの時代(A.D.2995)ではあり得ないシステムである。 「相転移航法(フェイズドライヴ)システム起動準備終了。」  マリアが指示をうながす様にライアスに視線を送った。 「よし!相転移航法(フェイズドライヴ)システム起動!進路、宇宙座標 1−5−A27、惑星『ダイン』へ!」 「了解、相転移航法(フェイズドライヴ)システム起動します。」 ヴ……ン……  低い振動音と共に星々が瞬きはじめる。空間が歪みだしたのだ。  グン!!  瞬間、ディスプレイに映っていた無数の星は姿を消し、異様なプレッ シャーがライアスを襲う。(本人はこの瞬間が堪らなく好きだそうだ。)  そしてディスプレイに映るのは漆黒の空間のみ。 「超光速空間へ突入完了。システム異常有りません。目標宙域到達まで およそ20宇宙標準時間です。」  事務的な口調でマリアが言った。 「20時間かぁ、暇だな‥‥」 「それじゃポーカーでもやります?」  マリアが挑発的な態度で言う。  ライアスがそれを断る訳が無かった。ライアスは大のギャンブル好き である。しかも売られた勝負は必ず買うと言う信念(?)を持っている のである。 「よ〜し!やってやろうじゃねぇーか!!」 「負けませんからね♪」  これから始まる壮大な物語も知らずにライアスとマリアは一路、惑星 『ダイン』に向かった・・・ ************************************** ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃巻末付録 『シャインストライク』スペック表     ┃ ┃形式:中型高速攻撃艇 ┃ ┃識別番号:MB−555 ┃ ┃全長:311.25M            ┃ ┃推進力:Zヴィジョン潮汐力ブースター×3、斥力場ターボ×2 ┃ ┃    相転移炉式相転移航法(フェイズドライヴ)システム  ┃ ┃攻撃機能 ┃ ┃ 主砲:相転移粒子砲(リープ・レーザーガン) ┃ ┃ 副砲:対空ファランクス砲×4 ┃ ┃ サイクロトロン砲×2 ┃ ┃ 加速粒子砲(ハイ・レーザー)×2      ┃ ┃ 高速追尾弾(ヘル・ハウンド)×6 ┃ ┃防御機能 ┃ ┃ 超高密度繊維装甲(コットン・アーマー)    ┃ ┃ サイ・シールド ┃ ┃メインコンピュータシステム『マリア・クロシェッド』   ┃ ┃マスター『ライアス・ガルディアン』 ┃ ┃製造年月日:不明     ┃ ┃製造会社:不明 ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 次回に続く!! 感想、意見等ガンガン承ります!! 転載は一様メール下さいね(^^;