#3・「タマゴの歌」  冬も半ば、ここはある山奥です。  穴の中で、リーピーはいつものようにタマゴを暖めていました。  そのタマゴは、リーピーのタマゴではありませんでしたし、 別に彼が暖めなければならないわけでもありませんでしたが、 とにかく見張っていました。 リーピーはそれが好きだったんです。  彼はこのタマゴが気に入っていました。  だから今までずっと、この卵があった場所で、 どんなに寒い日だろうが、暖め続けたのです。 (彼には卵を運ぶなんて器用なことはとてもできませんでした。)  もっとも、ここはそれほど寒くはありませんでした。  時々、風や雪が入ってくることがありました。  また、何か食べたくなる事もありましたが、リーピーは我慢しました。  辛くはありませんでした。タマゴがそこにあれば、彼は十分でした。  ある時人間が来て、彼のタマゴを取ろうとしたことがありました。  彼はそれを邪魔して、人間の手を噛んだので、 棒で突っつかれたり、引っ張り出されそうになったりしました。  リーピーはその時、タマゴが恐さに震えているような気がして、 一生懸命タマゴを守りました。  ようやく人間があきらめて帰って行った頃には、 リーピーはくたくたになっていました。  でも彼は、タマゴが嬉しがって 「ありがとう」って言っているような気がしたから、 「よかった」って、思いました。   皆さん、リーピーみたいな動物も、 ちゃんと、命の大事さを知っているんですよ。 fin.