#1・「夕方」  久しぶりに会社を休んだ午後、わたしは一人車を走らす。  幼い頃にはよく家族で登ったこの山…。  父は山に咲く花を見せて、その名前や特徴なんかを説明してたっけ。 …母は花を摘んで髪飾りやら首飾りやらを作ってた。  もう、昔の話だ…ずっと、ずっと昔のはなし…。  何も悩まず、何も恐れず、何も知らず、何も考えず、 それでも、幸せだった日々…。  車の窓から、きれいな赤い夕日が見える。  幼い日に見たのと同じこの夕日。  明日も、晴れるかな…。