「名前は?」  吉川は、そう質問した。  しかし、男の返事は、予想していたものとは異なっていた。 「・・・・・・・分からない」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」  吉川は、こいつは気が狂っているのか、と一瞬思ってしまった。が、気を取り直して、 「もう一度聞く。名前は?」  が、返事は、同じ、 「分からない!」  吉川も、これには黙り込んでしまった。 「何故オレにそんなことを聞くんだ!オレは何もしていないぞ!  ・・・うっ!」  男が叫んだそのとき、男が頭を抑えて唸った。 「大丈夫か?」 「あんたも、しつこいな!」  男は、ふらつきながらも、外へ出ていった。