第29話「魔女」前編 登場人物 椎野美佳 高校生 / 椎野律子 美佳の姉。 ジェシカ 殺された父の復讐にかける女 マックスウェル ジェシカの運転手 レイガン 殺し屋 ペトラルカ 青銅のファレイヌ 1 懐かしい景色 ここはどこなんだろう。 目の前には町全体の景色がいっぱいに広がっている。何だかとて も懐かしい風景。空は青一色。太陽は誰にも邪魔されず町全体を明 るく照らしている。 私はなぜか胸がドキドキしていた。それは時間が立つに連れ、ど んどん強くなる。 時々、私の体に吹きつける涼しい風が私の熱く、燃えるような胸 の鼓動を和らげてくれる。この風がなかったら、きっと私の胸は破 裂してしまうだろう。 私はこの町を一望できる小高い丘の上に立っていた。丘の緑は太 陽の光りで金色に輝いていた。 ああ……この胸の高鳴りは何なのかしら。胸が苦しい。でも、ち っとも辛くない。私は不思議とこの胸の苦しみが強くなるのを期待 していた。 何かが、これから何かが私に起ころうとしている。それは不吉な ことじゃない。まるで約束されたような幸福が私を待ち受けてる。 いったい何があるのかしら。 私は両手を胸に当て、目をつむった。なぜだかわからないけど、 後ろを振り向いてはいけない気がした。誰かが私を呼んでくれるま で。 ガサッ、ガサッ−− 草を踏む音。誰かが後ろから私の方へ歩いてくる。 ああ、名前が出てこない。でも、私の知ってる人だわ。まだ、顔 も姿も見ていないのに、私にはわかっていた。そして、その人は私 の肩に手を置いて、私の名前を呼んでくれる。 ガサッ、ガサッ−− 足音は次第に近くなってきた。この人はきっと私を幸福にしてく れる神様なんだわ。 ガサッ−− 足音が止まった。私の敏感な背中は人の気配を存分に感じていた 。 私は今にも震えてしまいそうだった。土壇場にきて、期待と不安 とが入り交じり、私の心は混乱していた。 「ジェシカ」 優しい声がした。そして、温かい手が私の肩にそっと乗せられた 。 「ジェシカ」 優しい彼の声。早く振り向かなきゃ。 私は高鳴る胸を懸命に抑えながら、目を開け、後ろを振り返った 。 −−−−フェリカ!!! * * * * 「はっ」 ジェシカは目覚めた。急に視界は暗闇になった。 ジェシカはしばらくベッドに寝たまま、目の前の暗闇を見つめて いた。 −−−あんな夢を見るなんて…… ジェシカはベッドから体を起こし、傍のテーブルの水差しからコ ップに水を注ぐと、そのコップの水に一気に飲み干した。 「はあ、はあ」 水を飲んだ後、初めて自分の呼吸の乱れに気付いた。 ジェシカは額の汗を拭った。 −−−どうしてあんな夢を。今まで父を殺された時の夢ばかりだ ったのに、今の夢は……。夢だけど、あの夢は前に経験したような 気がする、ずっと昔に ジェシカは頭を抱えた。 −−−父を殺した男なのよ。なのに、今の私は彼を……彼を憎ん で何かいない、どうしてなの!! ジェシカはベッドから飛び出すと、パジャマのまま、バスルーム へ飛び込んだ。そして、シャワーの栓を全快にひねって、水を浴び た。 −−−どうして、どうしてなのよ ジェシカは自分の復讐心の揺らぎに脅えながら、シャワーを浴び 続けた。 2 ちょっとした昔話 「レイガンさん、どうしたの」 矢上典子はセオドア・レイガンに声を掛けた。 「済まない。ちょっと考えることがあってな」 「そう」 典子はレイガンの胸に手を乗せ、軽く撫でた。 レイガンと典子は一つのベッドにいた。ここはレイガンの泊まっ ているホテルの部屋だった。 「典子、俺をどう思う?」 レイガンはじっと典子を見つめた。 「好きよ。そうでなきゃ、あなたとこうしていないわ」 「そうじゃなくてさ、俺は殺し屋だとか言ってるが、所詮は人殺し 。君の首をいつ絞めるかわからない恐ろしい男なんだぜ」 「ふふふ、おかしなこと言うのね。レイガンさんは殺し屋を職業と して割り切ってるかと思ったけど、意外と引け目を感じてるのね」 「人を殺すのはいつだって嫌なものさ。しかも、それが仕事となれ ばな」 「レイガンさんはどうして殺し屋をやってるの」 「どうして……か。俺は物心着いた時から、拳銃を握っていたから な。よくわからないな。ただ、人を殺すのが好きだった。それがた またま職業になったってことだな」 「いつから殺しが嫌いになったの」 典子は興味深い様子で聞いた。 「愛を知った時かな」 レイガンは呟くように言った。 典子は黙ってレイガンの顔を見た。 「二十年も前に俺は酒場で数人の男に絡まれていた一人の女を助け た。その女は美しく、気の優しい女だった。以来、彼女は俺を命の 恩人のように慕って、炊事や洗濯とかの家事の面倒を見てくれるよ うになった。その間の暮らしは俺にとって本当に幸せだった。いつ も敵の影に気を張り詰めていただけに、この安楽が信じられなかっ た。俺は拳銃を捨て、この生活を守るために懸命に働いた。だが、 ……その生活もわずか半年しか続かなかった。仕事で帰りが遅くな った晩、アパートに戻ってみると、女は刃物で滅多刺しにされて死 んでいた」 「そんなことがあったの……」 「それからというものは、ただ生きていくためだけの殺し屋稼業さ 。どんなにやめたくても、血塗られた過去が俺をほってはおかない 。結局、俺は最後まで黒い影に立ち向かって、生きていかなきゃな らんのさ」 「だとしたら、レイガンさん、私のこと、どう思ってるの。一夜限 りの遊び相手、それとも−−」 「俺は嫌いな女とは寝ないさ」 「でも、仕事が終わったら、あなたはアメリカへ帰ってしまうわ」 典子は寂しげな目をして、言った。 「その時は君も連れて帰る」 「ほんとに?」 「冗談さ。君を愛する気持ちは本当だが、一緒に暮らせば、君を危 険に晒すことになる」 「……そうね、昔の私ならあなたに付いていったかもしれないけど 。平和な暮らしを覚えてしまった私には、もうできそうにない」 典子はレイガンの顔に顔を近づけた。二人はしばし見つめあった 。 「気にすることはない。今の、この一時を楽しめれば、それでいい じゃないか」 レイガンと典子は唇を重ねた。 スタンドライトが仄かに照らすベッドの上で、二人は甘い愛欲の 世界に埋没した。 3 マックスウェル 椎野律子のマンション−− 玄関口では椎野美佳がジェシカのところへ戻るというジム・マッ クスウェルを止めていた。 「本当に帰るの?」 美佳は念を押すように尋ねた。 「ええ」 マックスウェルは静かに答えた。 「危険だわ。仮にもジェシカの計画を私に教えたんだもの。彼女が 黙っているわけないわ」 「大丈夫ですよ、美佳さん。私はお嬢様に生まれた時からお仕えし てまいりました。決して理由も聞かずに暴力をふるう方ではありま せん」 「でも……」 美佳はどうにも不安でならなかった。 「それにもしお嬢様が私に罰を加えたとしても、それは当然のこと ですから、気にはなりません。むしろ、お嬢様の手に掛かって死ね るのなら私は−−」 「馬鹿言わないで!!」 美佳はマックスウェルの言葉を遮った。「あなたが死んだら、ジ ェシカの心は二度と元には戻らないわ」 「美佳さんは心配性ですね。でも、本当に大丈夫です」 マックスウェルは優しく言った。 「マックスウェルさん……」 「お嬢様には私からよく説明しておきます。美佳さんには決してご 迷惑は掛けません」 「私は別にそんなことを言ってるわけじゃ−−」 「いいんですよ」 そういって、マックスウェルは右手を差し出した。 美佳は慌てて右手を出し、マックスウェルと握手をする。 「また会えるといいですね」 マックスウェルは微笑んだ。 「ええ」 「それでは、失礼します」 マックスウェルは手を離し、ドアのノブに手をかけた。 「一応、近くまで送っていくわ」 「いいえ、一人で行きます」 「そう……」 美佳はそれ以上、マックスウェルに話しかけるのを止めた。 「では、また改めて」 マックスウェルはドアを開け、部屋を出ていった。 美佳はしばらく玄関に立ち尽くしていた。 「美佳」 美佳の後ろから美佳の姉、椎野律子が優しく美佳の肩に手を乗せ た。 「姉貴……」 心配そうな顔で、美佳は律子を見た。 「大丈夫。マックスウェルさんの言葉を信用しましょ」 「姉貴はよくそう落ち着いていられるわね」 「私たちが彼を引き止めたところで、今の私たちに彼を守ってあげ られる力がある?」 律子の言葉に美佳は黙り込んだ。「今はなるようにしかならない わ」 「何もしないで、じっとしてろっていうの?」 「そういうこと」 「甘いわね、姉貴は」 「どういうこと?」 「さっき、マックスウェルさんに見せてもらったジェシカの八才ぐ らいの時の写真、覚えてる?」 「ええ」 「あの写真のジェシカの目、すごく澄んでて、悪意のかけらもなか った。でも、私を見るジェシカの目は狂気に満ちていたわ」 「仕方ないわ。長い間、復讐にかけていたんだもの」 「それだけかしら」 「何か気になることがあるの」 「別にそういうわけじゃないけど、ちょっとね」 4 彼女がいない? 「ん……」 レイガンはふっと目覚めた。「いけね、いつのまに寝ちまったの かな」 レイガンはベッドから体を少し起こし、隣を見た。 −−典子がいない。 レイガンは眉を顰めた。 −−妙だな、いついなくなったんだ。 レイガンは腕時計を見た。午前一時。 −−あれから一時間もたってないな。しかし、俺ともあろうもの が、セックス中に寝ちまうとはな。 レイガンはベッドから下り、浴室を見て回ったが、典子の姿はな かった。玄関には典子の靴もない。 続いて洋服ダンスを開けてみた。 −−典子の服はないな。俺に黙って帰ったということか。 しかし、テーブルにはメモらしきものはなく、彼女の黒革のバッ クが置いたままになっている。 レイガンは再びベッドに戻った。 −−妙だ。俺に気配を悟られず、部屋を出るとは。 しばらく彼は考え込んだ。 −−待てよ。まさかとは思うが…… レイガンはすっと立ち上がって、ベッドの下を見た。 −−ない。 さらにベッドの下に手を入れて、探ってみたが、何もなかった。 −−ライフルがない。典子にはここに隠したことを教えていない はずだが。仮に知っていたとしても、なぜ持っていく必要があるん だ。 レイガンは顎に手をやった。 −−とにかく、捜してみるか レイガンは洋服ダンスから服を取り出して着ると、部屋を出てい った。 5 夜道に立つ女 一台の黒いロールスロイスが夜の街路を走っていた。 −−もう1時か マックスウェルは運転しながら、ちらりと時計を見た。 午前1時とはいえ、今夜の街はゴーストタウンのような静けさに 包まれていた。人通りもなく、対向車もない。 マックスウェルは日本に来て、こんな静かな夜を体験するのは初 めてだった。 向こうの信号が赤に変わった。 マックスウェルはブレーキをゆっくりと踏んで、ちょうど横断歩 道の前の白線に車を止めた。渡る歩行者はいない。 −−お嬢様はどうしているだろうか。 いつも傍に仕えていたジェシカに半日も会わないと、さすがにマ ックスウェルは気になって仕方がなかった。 信号が青になった。 マックスウェルは、信号をはっきり確認してから、車を発進させ る。 マックスウェルは比較的安全第一に車を運転するが、それでも日 本の信号の多さには飽き飽きしていた。ろくにスピードも出せず、 それでいて少し進むとすぐ赤信号で止まらされる。さらに道もせま く、常に前後の車や人に気を配らなければならないから、気の休ま る時がない。 −−ん? 数十メートル先に人の姿が見えた。その人間はマックスウェルの 車の行く手を阻むように道の中央に立っている。 −−いったい何なんだ マックスウェルは不思議に思ったが、止まらないわけにも行かな い。仕方なくその人影の数メートル手前で車を止めた。 −−女だ…… マックスウェルは車を止めて、ようやく人の姿を認識した。女は 体全身をすっぽり覆うような大きなコートを着ていた。しかし、な ぜか両手とも服の袖に通していない。その女は、髪が長く、20代 半ばの若い女だった。 女はマックスウェルが車を止めても、ぴくりとも動かなかった。 ただじっと車の方を見ている。 マックスウェルはシートベルトを外して、運転席側のドアを開け 、車を下りた。 「どうかしましたか」 ややなまりのある日本語でマックスウェルは女に話しかけた。 だが、女は口を堅く閉ざしている。 マックスウェルはほっとくわけにもいかず、女の方へ向かって二 、三歩き出した。 その時だった。 女はコートに隠していた左手を出して、コートを勢いよくはぎ取 った。 「ああっ!」 マックスウェルは歩みを止めた。 女は右手にライフル銃を持っていた。そして、素早くリコイルパ ッドを胸に当て、銃身を左手で支えて、銃口をマックスウェルに向 けると、右手でグリップを握り親指をトリガーに添えた。 「何の真似だ」 マックスウェルは愕然とした顔で尋ねた。 「ふふふ」 女はスコープの対眼レンズを覗き込みながら、笑った。 マックスウェルは恐怖のあまり、後ろへ退いた。 「何者だ、おまえは」 「言ったところで、あなたにはわからないわ、ジム・マックスウェ ル」 「どうして私の名を……」 「あなたはジェシカの復讐を邪魔したわ。だから、あなたには死ん でもらうの」 「馬鹿な。いったいお嬢様とどういう関係なんだ」 「一心同体よ、十五年も前からね」 「嘘だ」 マックスウェルにはこの女が何者か、なぜ狙うのかさっぱりわか らなかった。 「嘘じゃないわ。私の左肩のホルスターを見てご覧なさい」 マックスウェルは女の左肩にかかったホルスターを見た。 「あれは……」 マックスウェルの顔色が変わった。ホルスターに入った銃は青銅 色だった。 「思い出してくれたかしら」 「まさか……そんなことが」 「さあ、話は終わりよ」 女はトリガーの指に力を入れた。 「や、やめろぉ」 マックスウェルは女に背を向け、逃げ出した。 「愚かな」 女はトリガーを引いた。 ゴオオォーン−− ライフル銃が火を吹く。 プシュ−− マックスウェルの後頭部に弾丸が命中した。マックスウェルはそ の勢いで前のめりに地面に倒れる。 「これで邪魔者が一人消えたわね」 女はマックスウェルの死を確認すると、地面からコートを取り上 げ、体に纏った。そして、車道脇に止めておいた自分の赤い車に乗 り、去っていった。 6 ペトラルカ ホテルの地下駐車場に一台の赤い小型車が入ってきた。 その車は無駄なく車で埋まっている駐車スペースの中で、迷わず 空いた駐車スペースを見つけ、その場所に入った。 カチャ−− 右側のドアが開き、車内からコートを着た女が下りてきた。 女はライフルケースを肩に掛け、車のドアを閉めた。 「典子、どこへ出掛けてたんだ」 隣の乗用車の反対側から男の声がした。 矢上典子は少し驚いた顔をして、声のした方を見た。 「レイガン……」 典子は呟いた。 「ライフル銃を持って、お出かけとは穏やかじゃないな」 レイガンはその車の前の方から回って、女の方へ歩み寄った。 「……」 典子は一瞬、黙り込んだが「あ、ボスからの連絡でライフル銃に 欠陥があることがわかったら、新しいのと交換に行ったのよ」と慌 てて誤魔化した。 「誤魔化しても無駄だ。君は一体、何者だ」 レイガンは典子を見た。 「何のこと?」 「俺は一度抱いた女は忘れないんだ。おたくは外見こそ典子だが、 雰囲気がまるで典子と別人だ」 「ふふふ」 典子の表情にも笑みがこぼれた。「よくわかったわね」 その時、典子のコートの内側から青い粉のような物が典子の足下 に落ちた。そして、次の瞬間、その粉は青白い光を発して、全身青 色のフランス人形に変化した。同時に立っていた典子がその場に倒 れた。 「な、何だ−−」 日頃、冷静なレイガンもこの時ばかりは驚きを隠せなかった。 //私は青銅のファレイヌ、ペトラルカよ 「こいつは驚いた。人形がしゃべりやがった」 //驚くほどのことじゃないわ 「おたくが典子を操っていたのか」 //そうよ 「典子の体を使って、何をしていた?」 レイガンは煙草を口にくわえ、ライターで火を付けた。 //邪魔者を始末しに行ったのよ 「邪魔者?」 //ジム・マックスウェルよ。あの男はジェシカの計画を美佳に 知らせたわ 「それで殺したのか」 //ええ。頭に銃弾を撃ち込んでやったわ 「驚いたね。一体、おたくの目的は何なんだ」 //椎野美佳とフェリカの始末よ 「ほお。おたくがそんなことをして何になるんだ」 //それをあなたに言っても多分、理解できないと思うわ 「宗教的大義名分なら俺も聞きたくないね」 //ふふ、それなら言うのはやめておくわ 「なぜ典子の体に乗り移ったんだ?別に他の人間でもいいわけだろ う」 //特に意味はないわ。ただ、あなたとコンタクトを取りたかっ ただけ 「俺と?」 //そう。昨日のビルの屋上での一件を見たかぎりでは、あなた も美佳を狙っているんでしょう 「まあな」 //だったら、私と手を組まない? 「おたくと?お手てつないで?」 //冗談で言ってるんじゃないのよ、レイガン 「こっちも別にジョークを飛ばしてるつもりはないぜ。あんな小娘 一人、俺一人で十分だ」 //今のあなたでは美佳を殺すことは無理だわ。昨日、あなたも 見たはずよ。美佳の持ってる黄金銃の力を 「あの銃を知ってるのか」 //あの銃は私と同じファレイヌよ 「ファレイヌって一体、何だよ」 //簡単に言えば人間の生命を持つ粉末よ。私たちは人間を操る ことも出きれば、あらゆるものに変形できるわ そういうと、ペトラルカは人形から銃に変形した。 「おお、こいつは凄い」 //どう、信じてくれたかしら ペトラルカは人形に戻った。 「ああ」 //相手にファレイヌがついている以上、あなたも私を味方に付 けないかぎり、永久に勝ち目はなくてよ 「協力の代償は何だ?」 //協力する気になったのね 「そちらの要求次第だな」 //いいでしょう。こちらの要求はフェリカの抹殺よ 「フェリカ−−何者だ、そいつは」 //椎野美佳、いいえクレールの兄よ レイガンはしばらく考え込んだ。 こんな化け物と組むというのはどうも気乗りしないが、昨日、俺 の銃にワンホールショットをかましてくれたあの銃はどう考えても 普通の銃じゃねえ。大体、あの時、美佳は後ろに隠し持って撃った んだ。どんなプロだって、そんな芸当、出来るはずがない。そうな ると、この女の言ってることもあながち嘘ではないということにな るな。 //どうするの ペトラルカがじれたようにレイガンに言った。 「よしわかった。手を組もう」 //商談成立ね。レイガン、これから私を使うといいわ そういうと、ペトラルカは拳銃に再び変形した。 レイガンはその拳銃を拾い上げると、右手でしっかりと握った。 「ずっしりとした重量感。こいつは期待できそうだ」 そういうと、レイガンはきらりと目を光らせた。 続く